イラストタイトル/令和の赤ずきん。
狼は赤ずきんの祖母の家のインターホンを鳴らしカメラを手で遮って、赤ずきんの声を真似た。
「赤ずきんよ、扉を開けて」
「あら赤ずきん、いったいどうしたんだい?」
「ケーキとワインを持ってきたわ、おばあちゃんのために」
「そうなのかい、今開けるからね」
狼は自分の爪と牙の感覚が澄んでいくのを感じた。
扉が開いたら出てきた祖母を殺すイメージを反芻する。
ロックが外れる音がしたのち、扉が開く。
しかし出てきたのは赤ずきんの祖母ではなく
赤ずきん本人だった。
赤ずきんは祖母の家に行くのに道に迷うことはなかった。
道端に花は咲いていない。祖母への贈り物は郵送で済ませていた。
「まあ。大きなお耳、大きな手、大きな目、
大きなお口ね」
赤ずきんは手に持った斧を振りかざした。